はじめに
風邪のあとに長引く「咳」や「痰(たん)」。
市販薬で対処できるケースも多いですが、咳止めと去痰薬は成分や作用が違い、「どれを選べばいいの?」と迷われる方がとても多いです。
この記事では、登録販売者で現役ドラッグストア店長の視点から、咳・痰の市販薬の選び方やタイプ別の使い分け、店頭でよく聞かれる疑問に答えていきます。
最初に押さえておきたいポイント
咳が出ると「とにかく止めたい」と思ってしまいがちですが、咳には身体を守る役割もあります。特に痰がある咳を無理に抑えると、かえって治りが遅くなることも。
まずは、「咳のタイプ(乾いた咳 or 痰が絡む咳)」を見極めることが、正しい薬選びの第一歩です。
店頭でよくあるご相談から
「夜中に咳が出て眠れない」「仕事中に咳が止まらず困る」など、咳の悩みは人によって本当にさまざまです。実際、あるお客様は咳が止まらず声が枯れてしまい、会話もままならないと相談に来られました。その方には「声帯を乾燥から守るタイプの薬(グアイフェネシン+のど潤い系)」を紹介し、数日後「だいぶマシになった!」と笑顔で再来店いただきました。
こんな風に、咳や痰の薬は“何を止めるか”ではなく“どの咳に何を補うか”を意識すると、うまく選べるようになります。
成分名 | 作用 | 向いている症状 | 代表的な市販薬例 |
---|---|---|---|
ジヒドロコデインリン酸塩 | 咳中枢を抑える(非麻薬性) | 激しい咳・乾いた咳 | 新ブロン液エース、プレコール咳止めGX |
デキストロメトルファン | 咳中枢を抑える(依存性低) | 乾いた咳、夜間の咳 | パブロンSゴールドW、コンタックせき止め |
アンブロキソール塩酸塩 | 痰を出しやすくする(去痰) | 痰がからむ、のどがゴロゴロする | ムコダイン類似薬、ジキニン去痰錠 |
L-カルボシステイン | 気道粘液の調整・去痰 | 慢性的な痰・副鼻腔炎にも | ムコソルバン、ムコソルガン |
グアイフェネシン | 去痰+気道潤滑 | 痰が切れにくい/乾燥が気になる | ベンザブロック咳止め、ブロン液EX |
症状別の選び方(店頭アドバイス)
- 「夜中に咳き込んで眠れない」→ デキストロメトルファン入りの咳止め(例:パブロンSゴールドW、コンタックせき止め)
- 「咳が激しくて胸が痛い」→ ジヒドロコデイン配合薬(新ブロン液エース、プレコール咳止めGXなど。ただし長期使用は避ける)
- 「痰が切れずにのどに絡む」→ アンブロキソール(ムコソルバン)やL-カルボシステイン(ムコダイン、ペラックT錠など)配合薬
- 「乾燥して咳が出る」→ グアイフェネシン配合薬(例:ベンザブロック咳止め、ブロン液EX)で潤いを補うのも手
※咳止めは「止める」のが目的ですが、痰があるときに咳を無理に止めると逆効果になることもあるため、症状に合わせた使い分けが重要です。
よくある質問Q&A
Q:咳止めと去痰薬は一緒に使ってもいいの?
A:症状によっては併用されることもあります。ただし、痰が多いときに咳だけを止めると痰が排出されず逆効果になるため、痰があるときは去痰薬中心に選ぶのがおすすめです。
Q:子どもに使える咳止めは?
A:子ども用には専用設計されたシロップがあります(例:ムヒのキッズせき止めシロップなど)。対象年齢と用法容量を必ず確認しましょう。
Q:咳が長引いているけど大丈夫?
A:2週間以上続く咳は市販薬ではなく医療機関の受診をおすすめします。喘息・感染症・逆流性食道炎など別の疾患の可能性もあるためです。
まとめ
✔ 咳止めは「乾いた咳」、去痰薬は「痰がからむ咳」に使う
✔ 成分を見て、自分の症状に合うか確認
✔ 子ども・高齢者は年齢に合った製品を選ぶこと
✔ 咳が長引くときは、無理せず受診を!
コメント