
「最近、食後に胃が重い…」「飲みすぎた翌朝がつらい」「ムカムカして集中できない」──そんなとき、市販の胃薬が心強い味方です。ただ、種類が多くて迷ってしまう方がとても多いのも事実。登録販売者の視点で、症状×作用の最短ルートをご案内します。
この記事でわかること(3つ)
- 自分の症状に合うタイプ(消化・制酸・粘膜保護・鎮痙・H2ブロッカー)がわかる
- 代表的な成分と商品タイプの違いがわかる
- 飲み合わせ・受診ラインの安全ポイントがわかる
🗓️ 更新日:2025年8月
病院に行くべき症状の見極め
次のような症状がある場合、市販薬ではなく医療機関の受診が必要です。
- 胃痛が数日続く、夜間に痛む
- 吐血や便に血が混じる
- 吐き気・嘔吐が激しい
- 体重減少や食欲不振を伴う
「市販薬を飲んでも改善しない」場合は、必ず医師に相談しましょう。セルフメディケーションの目安は 厚労省:セルフメディケーションガイドも参考になります。
まずは結論:胃薬は「症状×作用」で選ぶのが正解!
症状 | おすすめの作用 | 主な成分 |
---|---|---|
胃もたれ・食べすぎ | 消化促進・健胃 | 消化酵素、生薬など |
胸やけ・胃酸過多 | 制酸・粘膜保護 | 制酸薬、胃粘膜保護成分 |
ストレス性の胃痛・ムカムカ | 鎮痙・胃粘膜修復 | ロートエキス、セトラキサートなど |
飲みすぎ・二日酔い | 肝機能サポート・粘膜保護 | ウルソ、ソヨウなど |
店頭での接客事例

ご相談: 脂っこい食事が続き、食後の重さ・膨満感。胸やけは少なめ。高血圧薬を内服中で外出先でサッと飲みたい。
ご提案: 消化酵素+健胃生薬の消化薬(顆粒/液体)を食後〜食間に。胸やけ主訴でないので制酸は優先度低め。
確認ポイント: 炭酸水素Na主体の制酸薬はナトリウム量に留意(高血圧の方)。
フォロー: 2〜3日で変化なければ粘膜保護や制酸の併用を検討、長引くなら受診案内。
ご相談: 夕食が遅く、就寝前の胸やけ・酸っぱい逆流感。胃痛は強くない。降圧薬を内服。
ご提案: 就寝前にH2ブロッカー(ファモチジン)を短期使用+生活対策(食後2〜3時間は横にならない・枕を高く)。頓用で制酸+粘膜保護も候補。
受診ライン: 2週間を超える連用は避ける/嚥下時の痛み・黒色便・体重減少は医療機関へ。
ご相談: 緊張時に差し込むような胃の痛み。空腹時に出やすい。車通勤。
ご提案: 鎮痙薬(ブチルスコポラミン等)を頓用し、必要に応じて粘膜修復(アズレン+L-グルタミン)を継続。少量の消化にやさしい食事を併用。
注意: 鎮痙薬はかすみ目・口渇などが出ることがあり、運転前の服用は避ける。緑内障・前立腺肥大は禁忌/慎重。
症状別・成分別使い分け早見表
タイプ | 主な作用 | 代表成分例 | 剤型 | 1日回数目安 |
---|---|---|---|---|
消化薬 | 食べすぎ・胃もたれをやわらげる | ビオヂアスターゼ、リパーゼ、ウルソ | 錠/顆粒/液 | 食後1回〜毎食 |
制酸薬 | 胸やけの酸を中和 | 炭酸水素Na、水酸化Mg、沈降炭酸Ca | 錠/顆粒/液 | 1日3〜4回 |
胃粘膜保護・修復 | 胃粘膜を守る・整える | テプレノン、ソファルコン、セトラキサート、アズレン+L-グルタミン | 錠/顆粒 | 1日3回 |
鎮痙薬 | けいれん性の痛みを抑える | ブチルスコポラミン、ロートエキス | 錠 | 頓用〜1日3回 |
H2ブロッカー | 胃酸分泌を抑える | ファモチジン | 錠 | 1〜2回/日 |
総合胃腸薬 | 幅広くカバー | 複合配合 | 錠/顆粒/液 | 2〜3回/日 |
※用法・用量は製品により異なります。必ず添付文書に従ってください。
具体的な商品で比較
代表商品(メーカー) | 主成分の要点 | 向いている人 | 注意(避けたい人・併用) | 服用回数目安 | 剤型 | 眠気 |
---|---|---|---|---|---|---|
太田胃散(太田胃散) | 4種の制酸剤+7種の健胃生薬 | 食べすぎ・飲みすぎ後の胃もたれ/粉末でサッと飲みたい | ナトリウムを含むため塩分管理中は用量に注意 | 食後または食間 1日3回 | 散(粉末) | なし |
パンシロンG(ロート) | 制酸+消化酵素+L-グルタミン+健胃生薬+少量ロートエキス | 胃もたれ+胸やけが混在/顆粒が良い | 授乳中は避ける/緑内障・排尿困難は要相談/鎮痙成分の重複注意 | 食後 1日3回 | 顆粒 | なし(口渇・かすみ目に注意) |
第一三共胃腸薬(第一三共ヘルスケア) | 制酸+消化酵素+健胃+胃粘膜保護/ナトリウム・ロート不使用 | 幅広い症状を1本でカバーしたい/塩分やロート成分を避けたい | 成分重複(他の制酸・健胃薬)に注意 | 食後 1日3回 | 錠/細粒 | なし |
セルベール整胃錠(エーザイ) | テプレノン+生薬で胃粘膜を守る | ムカムカや慢性的な不快感の予防・改善 | 15歳未満は服用不可 | 食後 1日3回 | 錠 | なし |
ガスター10(第一三共ヘルスケア) | H2ブロッカー:ファモチジン10mg | 強い胸やけ/夜間の逆流感 | 2週間を超えて連用しない/他の制酸薬との重複注意/腎機能に不安があれば相談 | 症状時 1回1錠(必要時8時間後にもう1錠) | 錠 | なし |
タナベ胃腸薬ウルソ(田辺三菱製薬) | UDCA(ウルソデオキシコール酸)50mg/胆汁酸分泌促進で脂肪もたれに | 脂っこい食事由来の胃もたれ・消化不良 | 持病治療中は事前相談 | 夕食前または後に 1日1回1錠 | 錠 | なし |
ブスコパンA(エスエス製薬) | ブチルスコポラミン10mg(鎮痙) | 緊張時の差し込み・キリキリ痛の頓用 | 緑内障・前立腺肥大は禁忌/慎重/運転前は避ける | 頓用(最大1日3回/4時間以上間隔) | 錠 | なし |
サクロンQ(エーザイ) | オキセサゼイン(粘膜表面に直接作用) | ムカムカ・はきけを伴う胃痛を早く抑えたい | 1日3回まで・4時間以上間隔/長期連用しない | 症状時(最大1日3回) | 錠(クイック製剤) | なし |
※用法・用量・年齢制限・禁忌は各製品の添付文書で必ずご確認ください。成分の重複(例:制酸薬+H2ブロッカーなど)にもご注意ください。
胃もたれ・食べすぎに

消化酵素+健胃成分で“ため込んだ消化物”をさばく。脂っこいもたれにはウルソも選択肢。
- 主な成分:ビオヂアスターゼ、リパーゼ、ウルソ
- 商品例:太田胃散、パンシロンG、新ビオフェルミンS細粒
胸やけ・胃酸過多・ムカムカに

まず制酸で中和、反復するならH2ブロッカー(短期)を検討。粘膜保護を併用すると持ち上がる酸刺激をガード。
- 主な成分:炭酸水素ナトリウム、水酸化マグネシウム、テプレノン
- 商品例:第一三共胃腸薬、セルベール整胃錠、ガスター10
ストレス・神経性の胃痛に

差し込みには鎮痙、ダメージ予防に粘膜修復を組み合わせ。運転や持病の有無を必ず確認。
- 主な成分:ロートエキス、セトラキサート、鎮痙生薬
- 商品例:ブスコパンA、マーズレンS、サクロンQ
飲みすぎ・二日酔い時に

胃の荒れは粘膜保護、脂っこいもたれはウルソなどでケア。水分・睡眠・食事(消化にやさしい)もセットで。
- 主な成分:ウルソデオキシコール酸(UDCA)、ソヨウ乾燥エキス
- 商品例:ヘパリーゼ胃腸薬、ウルソ、キャベジンコーワα
市販の胃腸薬の選び方ガイド
剤型(錠剤・顆粒・液体)で選ぶ
「錠剤が飲みにくい」「持ち歩きやすいのがいい」など、ライフスタイルに合わせて選ぶのもおすすめです。
持病や常用薬がある方は要確認
- ガスター10などのH2ブロッカーは、他の薬と併用に注意が必要
- 肝機能に影響する成分は、肝疾患のある方に不向きなことも
- H2ブロッカー(ファモチジジン)の自己判断での連用は原則2週間以内(続く場合は受診)
- 鎮痙薬は運転前は避ける/緑内障・前立腺肥大は要相談
➡️ 高血圧・心臓病など持病がある方は、薬剤師や登録販売者にご相談を
よくある質問とアドバイスQ&A

Q1. いつ飲むのが正解?(タイプ別の目安)
- 消化薬:食後または食間(食べすぎ・もたれの直後に)。
- 制酸薬:症状が出た時/食後・就寝前。
- 胃粘膜保護・修復:食後にコツコツ継続。
- 鎮痙薬:差し込む痛みが出た時に頓用。
- H2ブロッカー:夜間の胸やけには就寝前などに短期使用。
Q2. どれくらいで体感できますか?
- 制酸薬:比較的早め(目安10〜30分)。
- H2ブロッカー:1回目から楽になることも(個人差)。
- 消化薬/粘膜保護:2〜3日で傾向がわかることが多い。
Q3. 何日まで使ってOK?(受診ライン)
- H2ブロッカー:自己判断の連用は原則2週間以内。続く・悪化は受診。
- その他:数日〜1週間で改善しなければ受診。吐血・黒色便・体重減少は即受診。
Q4. 他の薬と一緒に飲めますか?(併用のコツ)
- 制酸薬:一部の薬の吸収を下げる恐れ→2時間以上あける。
- H2ブロッカー:他の制酸系との重複に注意。
- 服用中の薬がある方は事前に薬剤師・登録販売者へ。
Q5. 夜だけ胸やけが強い時は?
- 就寝2〜3時間前に飲食を終える/枕をやや高く。
- 反復するならH2ブロッカーを就寝前に短期使用を検討(自己判断の連用は2週間以内)。
まとめ:自分に合った胃薬で不調をやわらげよう
- 胃薬は「症状×作用」で選ぶと失敗しにくい
- 成分を知ることで、選び方に自信が持てる
- 不安なときは、登録販売者や薬剤師に相談

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店長プロフィール
はる店長|登録販売者・セルフケアアドバイザー
10年以上の店頭経験を活かし、生活者の立場で選びやすい市販薬情報を発信中。
参考情報
関連リンク
- [胸やけ・逆流が気になる方へ:H2ブロッカーと制酸薬の使い分け(準備中)]
- [ストレス性の胃痛対策:鎮痙薬の選び方とセルフケア(準備中)]
- [飲みすぎ・二日酔い対策:UDCAと胃粘膜保護の基礎(準備中)]
- [下痢に効く市販薬の選び方ガイド]
- [食あたり・胃腸炎対策の市販薬まとめ]
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